『クリーピー偽りの隣人』がひどいと言われた理由はキャストの関係性からもわかります!
全キャストを通して描かれていたのは「ひどい喪失感」。
人の心の奥に眠る魔物の物語を描いた映画「クリーピー」を考察、解説していきます。
クリーピー偽りの隣人/キャスト解説!一番ひどいのは西野?
一番のひどさを感じたのは、メインキャラの西野。
香川照之さんが演じる、弱さから人を支配しようとするサイコパスです。
対象者の「人の好さ」だけでなく、「人の弱さ」にも付け入って洗脳していきます。
香川照之さんの、意味がわからない『じっとりとした気持ち悪さ』をまとう演技はさすが!
西野の正体
西野は西野ではありません。
他人の名義を勝手につかって成り代わっています。
恐ろしいのは本物の西野家を全支配して、娘すら自分の娘として仕立て生活しているところ。
西野は洗脳する際に「注射」を使っていました。
改めて、西野の目的を解説していきます。
西野の目的:何がしたかった?
西野がサイコパスを発動し注射まで使って何がしたかったのかと言えば、
①最低限の人と以外関わらず、他人のお金で生活する。
②自分が最高責任者であり、全てが意のままになる優越感。
この2点につきると思います。
西野は澪の母親の通帳を奪い、
「少ない、どうやって生活していたんだ」と呟いていました。
自分の手は汚さず、自分で何かをするのでもなく、最高位として指示するだけの生き方。
しかし、最後のシーンで高倉に自尊心の低さと脆弱さを見抜かれていたように思います。
私は西野の正体は強い目的をもった何かではないと感じました。
自分を隠すマントのように他者を操縦し生きるだけの存在。
人間の奥底に眠る狂気に突き動かされている「空虚」のように感じられたのです。
【クリーピー偽りの隣人】キャストの関係性がひどい!
【クリーピー偽りの隣人】のメインキャストは少ないです。
【クリーピー 偽りの隣人】
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— 本日の西島さん (@Nishijima_Time) April 21, 2016
しかし、その関係性から生まれるものがひどすぎる!
それぞれのキャストの関係性からひどい惨状を浮き彫りにしました。
澪と西野の関係
澪と西野は一見親子のように見せていましたが全くの無関係です。親子ではないが、外では西野が父親であるかのように振舞わせていました。
澪自身、言いなりになっているかと思えば、一転して高倉に助けを求めたり、康子に警告を見せたり。
どっちつかずのあやふやさに「澪はどういう存在なの?」と意味がわからなかった人も多いかもしれません。
途中、澪と澪の父母3人は西野によってとらえられていたことがわかります。
澪に単独で接触したのではなく、高倉や康子に近づいたのと同じ手順でしょう。
澪の家族、その持ち物まで含めてすべて自分の駒としていました。
私は澪は頭がよかった分、とにかく生きることを優先してそれ以外は遮断したように思えました。
西野の狡猾さも洗脳の怖さもわかっていたからこそ他人を巻き込めず助けも求められなかった。
けれど高倉たちを見て本能的に終わらせられると感じたように思います。
西野にとって、自分以外の人間はただの駒でしかないこともわかっていた。
崩壊するぎりぎりの精神で、感情を遮断し何とか自分を守ろうとしたのではないでしょうか。
澪も西野と言う存在を終わらせ自由になり復讐をしたかったと思うのです。
それが、あの結末の一言につながっていると感じます。
康子と西野の関係
高倉の妻、康子と西野の関係は不倫関係ではないと私は思っています。
どうみても、恋愛関係にあるようにはみえません。
制圧され服従させられているだけにみえるのです。
確かに康子は西野から気のあるような言葉をかけられたり手を握られたりしていました。
それは物理的に近づいて康子を自分の駒に引き入れるための足掛かりにすぎません。
康子は夫の高倉を心配こそすれ、本当に不信感を抱いていたわけではないと思います。
どんな人間も小さな不満や不安はあるものです。
本来なら取るに足らない程度の小さな闇が西野によって悪用されてしまったのだと思いました。
クリーピー偽りの隣人/キャスト達の結末「その後」もひどい?
最後、西野が高倉に撃たれて終わりを迎えます。
3人のメインキャストの行動から結末のその後を考察していきます。
捨て台詞を吐いて笑いながら去る澪。
高倉にしがみつき錯乱して泣き叫ぶ康子。
険しい表情で康子を抱きしめる高倉。
これ以上西野に洗脳されることはなくなった3人。
しかし、これで本当に自由になったのでしょうか?
澪の結末「その後」
澪も西野と言う存在を終わらせ自由になり復讐をしたかったと思うのです。
逃げ出すことや助けを求めることもできず感情を殺しながら檻に閉じ込められていた澪。
たまっていた感情の行き場が、あの結末での一言。
「ざまーみろ!!」と狂ったような笑いにつながっていると感じます。
西野が撃たれ犬のマックスを連れて揚々と歩きだした澪。
前途が明るいようには見えません。
例え自分を守ろうとしたとはいえ西野の狂気に適応しすぎていたようにも思えます。
半分は壊れてしまっているようで新たなサイコパスを生まなければいいなとゾッとしました。
康子の結末「その後」
康子は西野の洗脳で植え付けられた「罪悪感」はなかなか消えない気がします。
高倉がいるので薬剤の離脱や精神的な問題など、専門的なケアは入るかもしれません。
康子の性格では一度自分の中の魔物を見てしまった以上、想像以上の辛さが待っているでしょうね。
康子は魔物を克服できる日が来るのでしょうか?
高倉の結末「その後」
高倉は西野を撃っているので、このままなかったことにはならないでしょう。
しかも過去の犯罪はすべて西野の手を汚さずに行われています。
西野の指示であることをどう証明するのか?
正当防衛はみとめられるのでしょうか?
西野の狡猾さを思えば複雑な気分です。
犯罪心理学を学んでいた高倉も一種のサイコパス要素をかもしだしています。
高倉自身、凶へ向かうのか吉へ向かうのか危うさを感じます。
クリーピー偽りの隣人/キャストの関係性から映画を考察!まとめ
サスペンススリラーと言うジャンルにふさわしい冷え付きでした。
野上や谷本など、何とも言い難い結末だらけ。
警察、そんな不用心にいくか?
野上、それは公務違反では?
高倉よ、それはまずい!恐喝一歩手前!
と言うツッコミどころも多々ありました。
細々したところを除き、ストーリーに対しての感想。
率直に言えば、誰も幸せになったように感じない映画と感じました。
それだけに、迫ってくるような怖さ。
人の深層心理の闇が描き出されています。
別の意味で開けてはいけない【パンドラの箱】
開けたところに残っているのが希望ではなく絶望のような気はしますが。
絶望があるから希望を生み出すのだと思えば、これもまた「パンドラの箱」と言えるかもしれません。
とはいえ、現時点で感じたのは、
残された三人が決して明るい道へと戻ることはないのかもしれない。
という重さ。
私にとって「クリーピー偽りの隣人」は魔物を追った記録のような物語。
冷えたざわつきで幕を閉じた映画となりました。
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